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出汁は料理の土台といわれています。
その理由を探りながら出汁の役割について考えてみましょう。
目次
出汁とは
出汁は食材を煮て出した汁のことです。
「煮出汁」の略称であり、「出し汁」ともいいます。
日本料理における出汁は、鰹節や煮干し、昆布や干し椎茸などから取るのが一般的であり、一方西洋料理では牛や鶏や魚介や野菜などから取るブイヨンやフォンなどが日本料理でいうところの出汁となります。また中華料理では鶏や豚や魚介などが用いられます。
出汁は一つの食材で取る場合と、複数の食材を合わせて取る場合があり、複数の食材で取る出汁を「合わせ出汁」と言います。合わせ出汁は主に鰹節と昆布を合わせて取りますが、清汁(吸物)や蕎麦やうどんのつゆなどに用いる一番出汁と、一番出汁で用いた昆布と鰹節で煮出した二番出汁があり、こちらは味噌汁や煮物などに用います。
また、動物性の食材を禁止している精進料理では、昆布や干し椎茸や干瓢などから精進出汁を取ります。
日本料理の出汁は以上のようなものが一般的ですが、沖縄では、鰹節や昆布の他、豚バラ肉で取る豚出汁なども用いられています。
出汁に含まれるうま味成分
味覚には五つの基本の味があります。甘味、酸味、塩味、苦味、うま味の五つがそれであり、出汁は第五の味覚であるうま味を味わうことができるとされています。
うま味とは、アミノ酸の一種であるグルタミン酸やアスパラギン酸、ヌクレオチド構造をもつ有機化合物のイノシン酸やグアニル酸、その他の有機酸であるコハク酸やその塩類などによって生じる味のことをいいます。
中でも、昆布に含まれるグルタミン酸、鰹節に含まれるイノシン酸、干し椎茸に含まれるグアニル酸は、三大うま味成分といわれ、これらが加わることで料理の味が変わります。うま味が加わることで、塩や醤油のみで味付けしたものよりも更に深い味わいを楽しむことができるのです。また、出汁を効かせてうま味成分を引き出すことで、料理された食材そのものの味が生かされて調味料の量が減り、減塩や糖質オフの効果も期待できます。
出汁が料理の味を左右する
以上のことから、出汁は料理においてうま味を引き出す役割を持っていることがわかりました。
うま味が料理を美味しいと感じる味覚であることを考えれば、料理における出汁の役割も明らかです。出汁が料理を美味しくするためのものであるならば、出汁の良し悪しで料理の味が決まってしまうと言っても過言ではないでしょう。
調味料や味付けにどれだけこだわったとしても、出汁がきちんと取れていなければ、料理の味もぼやけたものになってしまいます。反対に出汁がしっかりと上手に取れているならば、薄味でも上品で洗練された味わいに仕上がります。材料である鰹節や昆布のうま味が引き出された本当に美味しい出汁は、素材の味を最大限に引き出し、余計な味付けを加えなくても充分に美味しい料理になるのです。
味というものはうま味のバランスで決まります。そのため、香りが強過ぎたり、味が濃過ぎたりすると美味しい出汁にはなりません。天然の出汁はとても繊細なものであり、どの素材を使うか、またその素材がどんな環境で育ったかなどでも味わいが変わり、火加減や気候などでも変化します。